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NTAA 国際テクニカルアナリスト連盟(IFTA)加盟 日本テクニカルアナリスト協会 特定非営利活動法人(NPO法人)

テクニカル分析への批判

チャートは過去の結果であり、将来は予想できない

すべての経済予想に共通する指摘

「チャートは過去の結果であり、それを将来へ延長しても実現するとは限らない」という指摘は、正しいと思います。ただし、それはテクニカル分析に限ったことではありません。例えば、ファンダメンタルズ分析では、ディスカウント・キャッシュフローを計算して株価が適正かどうかを判断します。しかし、これは、将来にわたって金利や為替などの事業環境に変化がなく、かつ企業が競争力を維持して利益を上げ続けることを前提としています。この前提がすべて実現する確率は、どの程度あるのでしょうか。

人の心理や行動は変化する

人間の心理や行動は、物理法則や化学反応とは違い、その時々の社会状況や経済環境によって変化します。そして、社会状況や経済環境自体が、多くの人の心理や行動が集積した結果であるため、過去と全く同じ状況や環境が再現される可能性は、ほとんどないといっても過言ではないでしょう。つまり、もともと、将来の株価を100%当てる予想方法は存在しないのです。

テクニカル分析も進化している

今から約100年前にシャバッカー(Richard W. Schabacker)は、あるパターンが形成された後の価格推移の想定法と、目標株価の算定法について紹介しました。しかし、シャバッカーの時代と現代では、経済環境が異なり、市場環境も異なります。新聞とラジオ、電報と電話で情報が伝わった時代と、インターネットで瞬時に世界中に情報が伝わる時代とでは、価格形成の展開や速さも違うはずです。

2005年になってバルコウスキー(Thomas N. Bulkowski)は、コンピューターを使って約500の銘柄を調査して様々な特徴的なパターンを抽出し、出現する場面、その後の騰落や変化率を調べ、「Encyclopedia of Chart Patterns」として出版しました。

本書ではそれぞれの出現確率が紹介されていますが、投資の実践に役立てるには「何%の確率で当たるのか」という視点は欠かせません。同じ状況が過去に何回出現して、何回外れて何回当たったのか、外れたときの損失の合計と当たった時の利益の合計とでは、どちらが大きいのかを知ることが重要だからです。

価格推移はランダム

日経平均日足終値の前日比騰落率は概ね正規分布をしている。日経平均日足終値の前日比騰落率は概ね正規分布をしている。ランダムウォーク仮説

アメリカの経済学者フレデリック・マコーレー(Frederick R. Macaulay)は1925年に、コインを投げて表が出れば1を加算し、裏が出れば1を減産して累計すると、株価チャートにきわめてよく似た推移になることを示しました。イギリスの統計学者モーリス・ケンドール(Maurice Kendall)は1953年に「経済時系列の分析」という論文を発表し、株価や商品価格はランダムウォークであることを実証しました。1965年になると、ジェームズ・ローリー(James Lorie)とローレンス・フィッシャー(Lawrence Fisher)は、猿がダーツを投げて銘柄を選んでも年平均9%のリターンが得られたと発表し、ランダムウォークの研究が加速しました。

ランダムでもトレンドは現れる

乱数で作成してもトレンドは現れる乱数で作成してもトレンドは現れるある日の価格騰落の確率はランダムかもしれませんが、それでもトレンドは現れます。図のローソク足チャートは、パソコンで乱数を発生させ、それを元に疑似株価を作成したものです。乱数で作ったにもかかわらず、価格推移にトレンドのようなものが見られます。これは、疑似株価を「直前の値を基準として、上下〇%以内範囲でランダムに作成する」というルールで作ると発生します。現実の株価も、直前の値を元にして注文値段を上げたり下げたりしますから、特殊なルールではありません。ランダムであってもトレンドは発生するのです。

上昇トレンドでは陽線が多く、下降トレンドでは陰線が多い

このチャートを見て、上昇トレンド(価格が継続的に上昇している期間)では前日比で上昇している線や陽線が多く、下降トレンド(価格が継続的に下落している期間)では前日比で下落している線や陰線が多いと思いませんか。ある程度の期間をかけて価格が上昇したり下落したりするのですから、当たり前の話です。とはいえ、陰線と陽線の出現率が先週と今週で変化していれば、トレンドが変わったことを示唆しているのかもしれません。

テクニカル分析は、トレンドの発生や消滅、転換を検知するための手法ですから、価格推移がランダムであっても、トレンドが存在する限り、テクニカル分析が有効性を発揮するチャンスがあるとテクニカルアナリストは考えています。

効率的な市場では、将来の予想はできない

効率的市場仮説とは

効率的市場仮説は、ランダムウォーク仮説に続く形で提唱されました。1960年代に米国の経済学者ユージン・ファーマ(Eugene F. Fama)は、利用できる情報がすべて織り込まれた市場を効率的市場と呼び、効率的市場では競合するたくさんの参加者の行動によって価格が本質的価値の周囲をランダムに変動すると考えました。同じ頃、ハリー・ロバーツ(Harry Roberts)は、市場の効率性には3つあるとしました。

ウィーク・フォーム:過去の情報がすべて価格に織り込まれている市場を指します。過去のデータを使って分析するテクニカル分析は有効性を持たないとされます。

セミストロング・フォーム:過去の情報に加え、企業の財務情報や業績予想などの公開されている情報がすべて織り込まれている市場を指します。テクニカル分析に加えてファンダメンタルズ分析も有効性を持たないとされます。

ストロング・フォーム:未公開情報も織り込まれている完全な市場を指します。インサイダー情報を持っていても利益を得ることができないことになります。

1970年代には、ストロング・フォームが成立しているとする研究の発表が相次ぎ、効率的市場仮説は広く支持を集めるようになりました。その結果、アクティブ投資ファンドは敬遠され、パッシブ投資のインデックス・ファンドが人気となりました。同時に、テクニカル分析は顧みる価値のない手法とされ、冷遇されることになりました。

仮説にとって不都合な事実

1980年代になると、効率的市場仮説では説明のできない事実が見つかり始めました。例えば、毎年1月に株価上昇率が大きくなる1月効果、PER(株価収益率)の低い銘柄に投資する方がPERの高い銘柄に投資するよりも収益率が高いという割安株効果、小型株に投資する方が大型株に投資するよりも収益率が高いという小型株効果などです。

また、相場の動向に関係なく継続的に投資収益を上げているウォーレン・バフェット(Warren E. Buffett)の存在も、効率的市場仮説の反証とされました。効率的市場では、マーケットに勝ち続ける投資家は存在しないはずですから。

行動経済学の勃興と新たな展開

1974年になると、アメリカの心理学者のダニエル・カーネマン(Daniel Kahneman)とエイモス・トベルスキー(Amos Tversky)は、日とは常に統計的計算をしているのではなく、手軽な解法や経験則に従っており、うまくいくときもあれば、失敗することもあると指摘しました。さらに、1979年にはプロスペクト理論を発表して、人は常に合理的に行動するという効率的市場仮説の前提を否定し、行動経済学というジャンルを創始しました。

1990年代にはいて行動経済学の研究が進み、理解と支持が広がると、効率的市場仮説は徐々に勢いを失い、2002年にカーネマンがノーベル経済学賞を受賞すると、行動経済学の優勢と効率的市場仮説の劣勢は決定的となりました。

これにより、「テクニカル分析は全く有効性を持たない」と頭から否定する論拠は薄弱となりましたが、有効性が認められたわけではありません。有効性を主張するには、その根拠を示す必要があります。そこで、コンピューターを使って様々なシミュレーションやテストが行われるようになりました。

後講釈が多い

結果を見てから、それに適合するシグナルを指摘して、あたかも事前に予想できていたように解説することを後講釈といいます。しかし、これはテクニカル分析の問題というよりは、使い手の問題ではないでしょうか。

選択肢の多い手法は要注意

確かに、コンピューターがない時代に考案された伝統的な理論などの中に、後講釈がしやすい手法があるのは事実です。そのような手法に共通している特徴は、目標価格やその達成時期の候補とする数値が多いことです。売買シグナルの種類が多いものや、例外則が多い手法も要注意です。候補が多ければ、そのどれかは近似的に当たるでしょうから、後講釈をするのは簡単です。

しかし、投資家が知りたいのはたくさんある候補値ではなく、一番実現する可能性の高い1個か2個の値です。こういう手法を使って実効性のある予想を立てるのは難しいですから、高度なテクニックだと思われて信奉者が多かったりします。

陥りがちな落とし穴

また、データ分析に慣れていない人が陥りがちな落とし穴もあります。よくあるのが、相場の先行きについて自分のストーリーを先に作ってしまい、それに都合の良いシグナルだけを重視して、自分のストーリーが正しいと思い込んでしまうことです。

これは分析ではありません。信頼性の高い見通しは、先入観を持たない分析結果に基づいて組み立てられるものです。先行き上昇を示唆するシグナルは何があるか、先行き下落を示唆するシグナルは何があるか。上昇を示唆するシグナルと下落を示唆するシグナルのどちらが多いか。どちらのシグナルが強いかを考えることが重要です。

後講釈にならないために

それらを総合した時、一番起こりそうなメイン・シナリオは何か。メイン・シナリオが正しいとすれば、次にどのようなシグナルが出ることが予想されるか。メイン・シナリオにはならなかった場合は、どのようなサブ・シナリオが考えられるのか。サブ・シナリオになるとすれば、次にどのようなシグナルが出ると予想されるか。

将来を確実に予想する方法はありませんから、好悪両方の材料を列挙して、確率の高い方を探すことしかできることはありません。テクニカル分析は、そのための手がかりの一つにすぎません。

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