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NTAA 国際テクニカルアナリスト連盟(IFTA)加盟 日本テクニカルアナリスト協会 特定非営利活動法人(NPO法人)

科学的手法(検証可能な手法)

投資対象の将来の価格水準や到達時期を的確に予想する方法はありませんが、足下の価格推移が明日も続く可能性が大きいか小さいかはある程度推測できるのではないか、という発想で様々な指標が考案されてきました。現在、テクニカル指標は世界に500種類以上あるといわれていますが、その一部をご紹介します。

変化の方向を知る

トレンドに沿って順張り投資をする場合、価格推移のトレンド(方向性)を知ることは、投資に参入するか否かを決断するうえで重要な判断材料の一つになります。しかし、日々の値動きはランダムに近いことも多いので、価格推移だけ見ていてもトレンドの有無に確信を持てない場合があります。そこで、トレンドの方向やトレンドの有無を検知することを目的とした指標が考案されています。

移動平均とMACD(マックディー、Moving Average Convergence & Divergence)

事前に決めた期間で計算した平均をつないだ線を移動平均といいます。1833年にイングランド銀行が考案したという説がありますが、詳細は分かりません。平均には様々な種類がありますが、日本でよく使われるのは単純移動平均(SMA、Simple Moving Average)と指数平滑移動平均(EMA、Exponential Moving Average)の2種類で、通常、終値で計算します。

目的:日々の雑音的な細かい上下動を消去することにより、ファンダメンタルズや需給の変化に基づいた、本質的な価格推移を抽出することです。

日足の分析により、現在の価格推移の状況が分かると同時に、翌日一番起こりそうな状況を想定できます。同様に、週足では翌週の、月足では翌月の想定ができますから、全部総合すると、今後1か月以内の相場動向を、かなり具体的にイメージすることがでます。

移動平均は、どのようなテクニカル分析を行う場合でも、必ず確認することをお勧めします。

計算方法:計算期間をnとすると、単純移動平均(SMA)は、n日(週・月)間の終値合計÷nです。

計算期間:任意ですが、よく使われる期間があります。

日足では5日、20日または25日、75日、200日がよく使われます。それぞれ1週間、1か月、3か月、1年を意識した数字です。このうち5日移動平均は、雑音を排した株価の動きと解釈します。

週足では5週、13週、26週、52週がよく使われます。それぞれ1か月、3か月、半年、1年を意識したもので、短期~中期トレンドを表しています。

月足では6カ月、12カ月、24カ月、60カ月がよく使われます。それぞれ半年、1年、2年、5年に相当し、中期~長期トレンドを表しています。

留意点:最適な計算期間は、分析対象によって異なり、同一銘柄でも年によって大きく異なります。トレンドの方向を確認する目的で使う分には、あまり問題になりませんが、売買シグナルに使う場合には注意が必要です。計算期間を選ぶときは、テストした期間のデータに最も適した値を選ぶのではなく、どの年でも60点くらいを取れるような値を選ぶようにします。

使い方:ローソク足に2本の移動平均を一緒に重ねて表示させるのが一般的です。そして、価格と2本の移動平均の位置関係を見ます。

上昇トレンドでは価格>短期移動平均>、下降トレンドでは価格<短期移動平均<長期移動平均という位置関係になります。

トレンドが転換するときには、この関係が逆転します。そこで、価格>短期移動平均となったタイミング、あるいは短期移動平均>長期移動平均となったタイミングをゴールデンクロス(Golden Cross、GC)と呼んで買いシグナルとします。また、価格<短期移動平均、あるいは短期移動平均<長期移動平均となったタイミングをデッドクロス(Dead Cross、DC)と呼んで売りシグナルとします。

利点:売買シグナルが分かりやすく、必ずシグナルが交互するので、初心者でも使いやすいことです。大きなトレンドでは、誰でも投資収益が得られます。

欠点:価格の変化に比べて、移動平均の変化が遅れることです。理屈の上では、単純移動平均は計算期間の1/2分遅行します。したがって、トレンドの転換点を検出する目的には向いていません。

対策: 遅行性の改善を目的として、以下の計算値を使う方法もあります。

指数平滑移動平均(EMA)=前日のEMA+(2÷(n+1))×(当日終値-前日EMA)、計算の一番最初に必要な前日EMAは、同じ期間で計算した前日SMAで代用します。また、計算期間のnは任意です。

移動回帰値=TREND(終値のセル範囲, , n)、休日を排除するため、時間は1~nの数列で代用します。計算期間のnは任意です。

短期移動平均と長期移動平均の位置関係に注目した指標にMACDがあります。米国のジェラルド・アペルが、1970年代後半に考案しました。0を中心としてマイナス圏とプラス圏を往復するオシレーターですが、上限値や下限値を持たないので厳密な意味でのオシレーターではありません。

目的:短期移動平均と長期移動平均の上下関係を数値化し、価格推移の勢いの変化を分かりやすくすることが狙いです。

計算方法:MACDでは、MACD、MACDシグナル、MACDヒストグラムの3種類の指標を使います。

MACD=EMA(12)-EMA(26)

EMA(12)=前日EMA(12)+2÷13×[当日終値-前日EMA(12)]

EMA(26)=前日EMA(26)+2÷27×[当日終値-前日EMA(26)]

MACDヒストグラム=MACD-MACDシグナル

MACDシグナル=前日MACD+2÷10×[当日MACD

-前日MACDシグナル]、3日で計算する場合もあるようです。

使い方:

MACD>0なら上昇トレンド、MACD<0なら下降トレンド、MACDがマイナス圏から0を上回ればゴールデンクロス(買いシグナル)、プラス圏から0を下回ればデッドクロス(買いシグナル)と判断します。

MACDシグナルは、判断には使いません。

MACD>0の状況で、MACDヒストグラムが増加すれば価格は上昇加速、減少すれば上昇減速、MACD<0の状況でMACDヒストグラムが減少すれば下落加速、増加すれば下落減速と判断します。

利点:価格推移の勢いの変化を数値で表すことにより、より客観的な判断をしやすくしたものです。

欠点:長短移動平均の価格差なので、価格水準の異なる期間や銘柄間の比較には使えません。また、単純移動平均よりは少ないものの実際の価格推移よりもシグナルが遅れている点に注意が必要です。

対策:MACDを異なる銘柄間で比較したければ、MACDを長短移動平均の差÷長期移動平均×100として比率にしてしまう方法が簡単です(%MACD 1)。遅行性については、長短の移動回帰値(EPMA, Endpoint Moving Average)を使って計算すれば、大幅に改善することができます(epMACD 2)。このほか、MACDを0~100で推移する狭義のオシレーターにしたければ、MACDをもとにストキャスティクスを計算するとよいでしょう(stMACD *3)。

*1:%MACDは仮称です。

*2:古城鶴也、2024、「新テクニカル分析-1:テクニカル アナリスト ジャーナル 2024, Vol.10」日本テクニカルアナリスト協会

*3:stMACDは仮称です。

価格トレンド指数(PTI、Price Trend Index)

時間と価格の相関関係からトレンドの有無を知る指標です。順位相関係数(RCI、Rank Correlation Index)という既知の手法がありますが、EXCELで計算するのが難しいのであまり普及していません。

そこで、EXCELを使えば誰でも計算でき、RCIと近似した値が得られ、同じ目的で利用できる簡便法をご紹介します。この指標は、当協会の古城鶴也が2014年に提案した手法です(*4)。しかし、コンセプトが簡単なので、いろいろな人が別の呼び名で使っている可能性があります。

価格が上昇トレンドにある場面では、価格が時間の経過とともに直線的に上昇し、下降トレンドでは、価格が時間の経過とともに直線的に下落していることが想定されます。この時、価格と時間の相関係数を計算すると、上昇トレンドでは正の相関、下降トレンドでは負の相関となり、トレンドが転換する前後では、両者の相関はなくなることが想定されます。ただし、価格は指数関数的に変動するので、相関係数を計算するときに用いる価格は対数を用いることにします。

目的:主観を排除して、トレンドの発生と消滅を検知するのが狙いです。

計算方法:計算期間は任意ですが、ここでは20日とします。

PTI=CORREL(時間のセル範囲, 価格のセル範囲)

時間の値には、1、2、3・・・・・・18、19,20という数列で代用します。EXCELの日付(シリアル値)には休日を含んでいるので、その影響を避けるためです。

計算用の価格には、終値の常用対数(log10)を用います。

使い方:PTIが+0.5を上回って推移している場面は、価格は時間の経過とともに上昇していることを示唆します。PTIが-0.5を下回って推移している場面は、価格は時間の経過とともに下落していることを示唆します。PTIが-0.5と+0.5の間にある場面は、底練りの局面や中段揉みあいの局面など、上昇または下降の方向性が失われていることを示唆します。

利点:相場のトレンドの方向や有無を、観察者の主観を排除して判断できることです。また、観察者の熟練度に関係なく、同じ判断になることも長所でしょう。

欠点:単純移動平均ほどではありませんが、実際の価格の変化よりも遅行します。売買シグナルとして使う場合には、注意が必要です。

対策:ほかの手法と同様、最適な計算期間は分析対象ごとに、またテスト期間によって異なると考えた方が良いでしょう。売買シグナルとして使う場合には、十分なテストが必要です。

*4:古城鶴也、2025、「新テクニカル分析-2:テクニカル アナリスト ジャーナル 2025, Vol.11」日本テクニカルアナリスト協会

トレンド強度指数(TII、Trend Intensity Index)

トレンド強度指数は、アメリカで金融関係のシステム開発エンジニアをしていたM・H・ピー(M. H. Pee)が2002年に発表した指標です(*5)。トレンドの強弱を知るオシレーターで、トレンドの発生を知り、強いトレンドに追随して順張りすることを目的としています。オシレーターというと、買われ過ぎや売られ過ぎを検知して逆張りをする指標を思い浮かべがちですが、最近はトレンドを検知する順張り系のオシレーターも増えています。

目的:移動平均乖離の変化を監視して、トレンドの変化を検知します。

計算方法:計算期間は任意ですが、ここでは考案者が用いた60日と30日を使います。EXCELで計算するものとし、A列に日付、B列に始値、C列に高値、D列に終値、E列に出来高が記録されているものとします。

F列は、60日移動平均を計算します。セルに入れる式は「=Average(59日前のD列:当日のD列)」です。

G列は「Deviation」として、29日前の終値から当日終値まで、当日の60日移動平均に対する乖離を計算し、その絶対値の合計を求めます。セルに入れる式は「= SUMPRODUCT(ABS(29日前のD列:当日のD列-当日のF列)」です。日々の終値とその日の60日移動平均の差を30日合計したものではないことに注意してください。

H列は「+SD」として、29日前の終値から当日終値まで、当日の60日移動平均に対する乖離を計算し、そのうちプラスの値の合計を求めます。セルに入れる式は「=SUM(29日前のD列:当日のD列)-当日のF列×30」です。

I列は「numerator」を計算します。セルに入れる式は「=IF(当日のH列>0, (当日のG列-当日のH列)/2+当日のH列, (当日のG列+当日のH列)/2)」です。

J列は「TII」を計算します。セルに入れる式は「当日のI列/当日のG列×100」です。

使い方:TIIが50超で推移している場面は、上方乖離が下方乖離を上回っている状態で、上昇トレンドにあることを示唆します。一方、50未満で推移している場面は、下方乖離が上方乖離を上回っている状態で、下降トレンドにあることを示唆します。したがって、TIIが50未満から50を上回ってくるタイミングはボトムアウト、50超から50を下回ってくるタイミングはピークアウトを示唆します。ちなみに、考案者は、商品先物でテストした結果をもとに、TIIが80%を上回るタイミングで買い参入し、20%を下回るタイミングで売り参入するのが良いとしています。

利点:計算に移動平均乖離を使っていながら、移動平均とは異なるタイミングでシグナルを出します。オシレーターなので、判断基準を数値化することができ、バックテストがしやすいのが利点です。

欠点:大きなトレンドを捉えることを目的としているので、小幅で揉みあうような価格推移ではシグナルが出ず、損失の原因となる可能性があります。

対策:テクニカル分析全般に言えることですが、計算ロジックの異なるほかの指標と比較する、計算期間の異なる長短2種類のTIIで比較するなど、常にセカンド・オピニオンを意識していることが肝要です。また、大きなトレンドが発生する可能性がどの程度期待できるのか、ファンダメンタルズも含めて検討する広い視野も求められます。

*5:M. H. Pee, 2002, “Strong Trends = Strong Profits – Trend Intensity Index : Stocks & Commodities Maagazine”, Technical Analysis Inc.

変化の振れ幅を知る

価格はトレンドに乗って推移している場合であっても常に上下動を繰り返しており、ある程度の幅を持って推移しています。この振れ幅を推定することができれば、下限に近づいたら買い建て、上限に近づいたら売り建てるという逆張り投資が考えられます。また、保ち合い相場から限界値を突破すれば、新しいトレンドに入ることが予想されるので、順張り投資に変更することもできます。そのような思惑から様々なバンドが考案されました。

「保ち合い放れにつく」という作戦は、日本でも「一文新値につけ」という相場格言があります。ここでいう「一文」は呼び値の最小単位です。1円刻みの銘柄なら、新値を1円でも更新したら、その方向に順張りした方が利益を得るチャンスが多いという意味です。

しかし、日本には「一文新値に向かえ」という言葉もあります。これは、大きなトレンドの初動では大幅な値動きとなることが多いので、小幅な突破ならダマシを疑って逆張りした方が利益を得やすいという意味です。どちらの格言も一理あり、どちらを採用するかは、その時々の状況と投資者の好みにより分かれます。

ただ、いろいろバックテストをしてみると、上限・下限で逆張りするよりも、放れにつく戦法の方が分の良い場合が多いようです。

ドンチャン・チャネル(Donchian Channel)

先物トレーダーのリチャード・ドンチャン(Richard Donchian)が考案したものです。1950年に考案したトレンドフォロー指標のタートルトレーディングルールが元になっているともいわれています。後に、リチャード・デニス(Rchard Dennis)が抱いた「トレーディング技術は教えることができるか」という疑問を解決するために採用した投資手法としても有名です。

目的:大きなトレンドに入る場面では、過去に抵抗帯となっていた水準をブレイクアウトします。そこで心理的な抵抗帯となる過去の高値や安値の水準を図示し、ブレイクアウトを検出することを目的としています。

計算方法:計算期間をn日、m日とします。mは通常nの2倍程度とします。短期バンドでは、n=10、m=20、長期バンドではn=20、m=55などが使われますが、分析対象によって適宜変更した方が良いでしょう。

上方バンド1=過去n日間の最高値

上方バンド2=過去m日間の最高値

下方バンド1=過去n日間の最安値

下方バンド2=過去m日間の最安値

使い方:価格が上方バンド2を上回ったら買い参入し、その後、価格が下方バンド1を下回ったら買いポジションを解消します。また、価格が下方バンド2を下回ったら売り参入し、その後、価格が上方バンド1を上回ったら売りポジションを解消します。このほか、上方バンドと下方バンドの中値(平均)を結ぶ線を引いて、目安とすることもあります。

利点:大きなトレンドに入ったと判断する基準が明確になり、観察者の主観が入らなくなります。また、初心者と熟練者で、判断が同じになることも利点でしょう。

欠点:シグナルが実際の価格変化よりも遅い傾向があります。また、売買シグナルが出た後、価格変化が小幅で反転してしまうと損失となる可能性があります。

対策:トレンド系の順張り手法は、大きなトレンドで利益を上げることができますが、小幅で頻繁に折り返す相場では損失になりやすい傾向があります。バックテストの際には、利益の最大化に関心が向きがちですが、損失の最小化という視点も必要でしょう。また、投資対象によっては、どのように最適化しても満足な結果が期待できない場合があるということも忘れてはいけません。

ボリンジャー・バンド(Bollinger Bands)

アメリカのオプション・トレーダーだったジョン・A・ボリンジャー(John A. Bollinger)が1980年代半ばごろに考案した手法です。オプション価格は、原資産のボラティリティによって動くため、原資産の価格推移の標準偏差をボラティリティの指標にしようと考えました。

ボラティリティとは、値動きの荒さのことです。ボラティリティが大きければ(値動きが大きく上下すれば)、標準偏差は価格に比べて大きな値となり、ボラティリティが小さければ(値動きが小幅で穏やかなら)、標準偏差は小さくなります。

価格変動がランダムで、移動平均を中心として価格が左右対称の正規分布をしていると仮定すると、価格の約95%は移動平均±2標準偏差(σ、シグマ)の範囲に収まります。従って、母集団が変わらない、すなわち同じトレンドが続いているのであれば、±2σの範囲で往復することが予想されます。

一方、±2σの範囲から逸脱する場合には、価格が新しいレンジの母集団に移った、すなわちトレンドが変わったことが示唆されます。つまり、ボリンジャー・バンドは、ドンチャン・チャネルと同じ目的で使用することができます。つまり、ドンチャン・チャネルのバンド幅を、少し合理的にしたという見方もできます。

目的:価格推移のボラティリティを視覚的に表示して、価格推移の反転や新しいトレンドの発生のめどとします。

計算方法:計算期間を20とし、オリジナルの算式に従ってEXCELで計算する方法を以下に示します。

ティピカル値(TP)=(高値+安値+終値)÷3、簡便法では終値を使います。

移動平均=Average(19日前のTP:当日のTP)

σ=STDEV.P(19日前のTP:当日のTP)

+2σライン=移動平均+2×σ

+1σライン=移動平均+σ

-1σライン=移動平均-σ

-2σライン=移動平均-2×σ

使い方:価格とバンドの状況により、以下のように判断します。

価格がバンドの間で往復している場面では、±1σや±2σ、移動平均が価格の到達めどになります。

価格が±2σを跨いだ場合には、価格が折り返す可能性と新しいトレンドが始まる可能性の両方が考えられるので警戒します。

価格が片方の2σラインを押し広げるように推移する場合には、新しいトレンドが始まったものと解釈します。

バンド幅の狭い状態が続いている場合には、トレンドが安定もしくは硬直していると考えます。

バンド幅の広い状態が続いている場合には、価格推移の不安定な状態が続いていると考えます。

バンド幅の広い状態が急に狭まってくる場合には、トレンドが硬直してきたり、トレンドの転換が近づいている可能性があります。

バンド幅の狭い状態が急に広がってくる場合には、新しいトレンドが始まった可能性があります。

利点:価格推移の状況が分かりやすいのが利点です。標準偏差という統計値を使っているという安心感もあります。

欠点:中心が移動平均なので、価格の変化よりも遅行している点には注意が必要です。また、20日という計測期間では、価格は上昇トレンドでは移動平均より上、下降トレンドでは移動平均より下で推移することが多く、価格が移動平均を中心とした正規分布をしているとは言えないため、標準偏差は根拠を持ちません。価格が±2σの範囲にどのくらい入るかを実測してみると、85%程度しか入りません。

対策:±2σの範囲に学問的根拠がないとはいえ、めどとして有効な場合が多くあります。参考値として使う分には問題がないでしょう。遅行性を改善し、より信頼性の高いレンジを知りたければ、古城鶴也の考案したKチャートを使うと良いでしょう。Kチャートの計算方法は難しいので、著作を参考にしてください(*6)。

*6: 古城鶴也、2017、「Kチャート入門-コンセプトから計算法まで-:テクニカル アナリスト ジャーナル 2017 Vol.4」日本テクニカルアナリスト協会

古城鶴也、2019、「テクニカル分析がわかる」日本経済新聞社(日経文庫1410)

標準誤差バンド(Standard Error Bands)

標準誤差バンドは、ジョン・アンダーソン(Jon Anderson)が1996年にストック&コモディティー・マガジン(Stocks & Commodities Magazine)で発表した指標です。ボリンジャー・バンドやKチャートが、価格の散らばる範囲を図示するのに対して、標準誤差バンドは、回帰値を価格の収束する値と考え、回帰値の誤差範囲を図示しています。

回帰直線はトレンドラインの1種ととらえることができますから、標準誤差バンドは、トレンドの誤差範囲を示しているともいえます。従って、価格が±2標準誤差から逸脱した場合には、トレンドが変わったことを意味します。

目的:±2標準誤差のラインと価格が交差することによって、トレンドの始点と終点を検出する手法です。

計算方法:EXCELで計算するには以下のようにします。考案者の推奨計算期間は21です。

時間の代わりに1~21の数列を用意します。

移動回帰値=TREND(20日前の終値:当日の終値, , 21)

標準誤差(SE)=STEYX(20日前の終値:当日の終値, 時間数列の1:時間数列の21)

SEの3日移動平均( SMA(SE) )=Average(3日前のSE:当日のSE)

-2SE=移動回帰値-2×SMA(SE)

+2SE=移動回帰値+2×SMA(SE)

%A=(終値と-2SEの差)÷(+2SEと-2SEの差)×100

使い方:まず、チャートに標準誤差バンドとボリンジャー・バンドを重ねて表示します。ボリンジャー・バンドの幅が狭まった場面で、標準誤差バンドが上に向かって動き始め、ボリンジャー・バンドの幅が広がり始めるようなら強気相場に入ったと判断します。一方、ボリンジャー・バンドの幅が狭まった場面で、標準誤差バンドが下に向かって動き始め、ボリンジャー・バンドの幅が広がり始めるようなら弱気相場に入ったと判断します。

利点:ボリンジャー・バンドよりもバンドの幅が狭く、価格推移の方向が明確に示されます。また、ボリンジャー・バンドと併用することで、ダマシを減らせるのも良い点です。

欠点:ボリンジャー・バンドとの併用だと、ボリンジャー・バンドが移動平均を使っているため、遅行性を排除できません。

対策:遅行性を改善するため、考案者はマネーフロー指数やストキャスティクスも併用することを推奨しています。

相場の行き過ぎを知る

価格推移のトレンドがどのくらいの期間継続するか、トレンドが終わる前に知る方法はありません。価格推移はトレンド方向に動いているときも常に上下動を繰り返しており、トレンド方向に一直線に動くことはありません。そこで、価格や出来高の推移を監視して、価格推移に行き過ぎの兆候がないか、その有無を検知する目的で考案された指標です。過去のトレンドが続いていれば、行き過ぎれば元に戻る動きとなるでしょう。しかし、過去と異なるトレンドが始まったのであれば、異常値が続くことになります。したがって、この指標も順張りと逆張りのどちらにも使うことができます。

ストキャスティックRSI(Stochastic Relative Strength Index)

J・ウェルズ・ワイルダー・ジュニア(J. Welles Wilder Jr.)が1978年に発表した相対力指数(RSI、Relative Strength Index)の弱点を補うため、ジョージ・C・レーン(George C. Lane)が1957年に発表したストキャスティクス(Stochastic Oscillator)を組み合わせたオシレーター指標です。

RSIは、一定期間の終値の前日比騰落幅を見たときに、上昇幅の合計がすべての騰落幅の合計に対してどのくらいの割合になるかを0~100%の値で表したものです。80%を上回れば買われ過ぎ、20%を下回れば売られ過ぎと判断します。計算期間を長くするとトレンドの判定に向く指標になりますが、50%から大きくは離れなくなります。行き過ぎの目安を変更しても良いのですが、そうすると目安の異なる銘柄間で、指標の効果を比較することが難しくなります。

一方、ストキャスティクスは、当日の終値が一定期間の最高値と最安値の間でどのくらいの位置にあるかを0~100%の値で表します。従って、RSIをもとにストキャスティクスを計算すれば、RSIがどの範囲で推移していても、0~100の範囲で推移する指標に変換することができ、先の問題を回避することができます。

目的:RSIがどのような範囲で推移しても、必ず0~100の間で往復するように変換して表示します。

計算方法:ここでは簡便法で計算します。計算期間nは任意です。

前日比騰落幅=当日終値-前日終値

RSI=直近n日間で前日比がプラスだった値幅の合計÷同じ期間で前日比騰落幅をすべてプラスとした合計した値×100

stRSI=(当日RSI-直近n日におけるRSIの最低値)÷(同期間におけるRSIの最大値-最低値)×100

使い方: stRSIが、80%を上回れば買われ過ぎ、20%を下回れば売られ過ぎと判断します。また、stRSIが50%を上回れば上昇トレンド入り、50%超で推移している間は上昇トレンドが継続していると判断します。同様に、50%を下回れば下降トレンド入り、50%未満で推移している間は下降トレンドが継続していると判断します。

利点:買われ過ぎゾーンと売られ過ぎゾーンのどちらでもない、中途半端な範囲で推移するということがなくなり、投資判断がしやすくなります。

欠点:本来、マーケットにエントリーすべきではない小動きの場面でも、指標を0~100に増幅してしまうので、騙しのシグナルが出る可能性があります。

対策:stRSIは、普通のRSIと相互に比較して用いる方が良さそうです。

マネーフロー指数(MFI、Mony Flow Index)

マネーフロー指数は、米国のテクニカル分析プログラムの開発者ジーン・クォン(Gene Quong)とブリティッシュコロンビア大学の電気工学の教授エイブラム・サウダック(Avrum Soudack)が、1989年に発表したオシレーター指標です。

2人は、相場の典型的な天井局面や大底局面では出来高が大きく変動する可能性があるので、ワイルダーが考案したRSIに出来高の要素を加えるべきだと考え、この指標を考案したようです。

目的:市場に出入りする資金の強さを測定することにより、マーケとの状況をより的確に判断しようとしたものです。

計算方法:考案者が推奨する計算期間は14日です。

ティピカル値(TP)=(高値+安値+終値)÷3

マネーフロー(MF)=出来高×TP

ポジティブMF=n日間でTPが前日比上昇した日のMF合計

ネガティブMF=n日間でTPが前日比下落した日のMF合計

マネーレシオ=ポジティブMF÷ネガティブMF

マネーフロー指数(MFI)=100-100÷(1+マネーレシオ)

使い方:MFIが80を上回れば天井圏、20を下回れば底値圏と判断します。また、MFIが天井圏にあるときに価格が高値を更新しない、あるいはMFIが底値圏にあるときに価格が安値を更新しない場合は、相場反転の強いシグナルと考えます。さらに、価格とMFIがダイバージェンスとなる場合も反転が接近しているシグナルとなります。

ダイバージェンス:価格推移が高値を更新しているにもかかわらず、オシレーター指標が高値を更新しない場合を、ネガティブ・ダイバージェンスと呼んで反落接近の予兆とされます。一方、価格推移が安値を更新しているにもかかわらず、オシレーター指標が安値を更新しない場合をポジティブ・ダイバージェンスと呼んで反騰接近の予兆とされます。

利点:大きなトレンドが発生する場面では、多くの場合、出来高を伴って価格が動きます。一方、出来高を伴わない価格変動は、その相場に参加する投資家が少ないことを意味し、大きなトレンドとはなりにくいことが予想されます。MFIは、出来高の要素を加味して価格変動を捉えるので、より実践向きになっていることが期待されます。

欠点:買われ過ぎゾーンと売られ過ぎゾーンのどちらでもない、中途半端な範囲での推移が続くことがあり、判断に迷う場面があります。この場面を投資に不適切な時期と考えて、無視してよいのかどうかは検討の余地があります。

対策:MFIをもとにストキャスティクスを計算してみる方法があります。また、価格だけで計算したRSIと比較してみる方法もあります。

ランダムウォーク指数(RWI、Random Walk Index)

ランダムウォーク指数は、米国のトレーダーズ・インサイト社でソフトウェア開発とコンピュータ取引支援ツールの研究開発を行っていたマイケル・ポウロス(Michael Poulos)が1991年に発表した指標です。

ポウロスは、価格がランダムウォーク理論で想定される範囲内にあるときの値動きはランダム、想定範囲を超えたときはトレンドが発生していると考えました。これにより、トレンドが発生しているときにはトレンドフォロー、ランダムなときにはオシレーターを利用して逆張りといった、投資戦略の使い分けが可能になります。

目的:価格がトレンドに沿って動いている時期とランダムに動いている時期を明確に区分することにより、投資適期の判断の一助とします。

計算方法:計算期間nは、短期は2~7日の間、長期は8~64日の間で、RWI-HまたはRWI-Lが最大となるnで、毎日調整します。

トゥルーレンジ(TR)=(当日高値-当日安値)、(前日終値-当日高値)の絶対値、(前日終値-当日安値)の絶対値のうちの最大値

ATR=TRのn日平均

RWI-H=(当日高値-n日間の最安値)÷(ATR×nの平方根)

RWI-L=(n日間の最高値-当日安値)÷(ATR×nの平方根)

使い方:RWI-Hが1を上回っている場合は、上昇トレンドが発生していると判断します。RWI-Lが1を上回っている場合は、下降トレンドが発生していると判断します。RWI-HとRWI-Lの両方が1未満の場合は、価格推移がランダムだと判断します。

また、短期のRWIと長期のRWIを比較して、ともに1を上回っている場合には強いトレンドに入っていると判断します。一方、片方のシグナルが1を下回っている場合には、慎重に検討する必要があります。

利点:トレンドの有無を客観的に判断でき、初心者でも熟練者でも同様の判断ができることでしょう。

欠点:最適な計算期間nを求める方法が煩雑なことです。また、RWI-HまたはRWI-Lが1を上回るのを確認してからポジションを取るのでは遅すぎて、ダマシとなる取引が増える恐れがあります。

対策:分析対象のボラティリティに応じて計算期間を固定する方法もあるかもしれません。シグナルが遅れる点については、他のテクニカル指標と併用する方法があるかもしれません。

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