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NTAA 国際テクニカルアナリスト連盟(IFTA)加盟 日本テクニカルアナリスト協会 特定非営利活動法人(NPO法人)

伝統的理論

1900年代前半には、投資家の経験則をベースに様々なテクニカル分析手法が考案され、価格や出来高の推移に注目した投資理論が構築されました。株価の大暴落やそれに続く世界恐慌があって、投資家は何かよりどころを求めていたのかもしれません。

当時は、すべて手で記録し、計算していました。データベースはありませんから、予想通りに実際の相場が推移しているかどうか網羅的に調べて、統計的に有効性があるのかを検討することはできませんでした。その結果、悪意はなくても、都合の良い結果に目が向いてしまう主観的な観察や、辻褄の合う都合の良い解釈を採用しているという指摘は避けられません。

対面で取引が行われ、新聞、ラジオ、電話が主な情報伝達手段だった時代に構築された手法や理論が、コンピューターを使って約定が行われ、インターネットを通じて情報が瞬時に世界中へ伝わる現代に通用するとはとても思えません。とはいうものの、ポジションを持っている投資家が感じるストレスや迷いは、今も昔もそう変わっていません。

昔の人が何を考えていたかを知ることは、同じ過ちを繰り返さないためにも意味のあることでしょう。そこで、代表的なテクニカル分析理論をいくつかご紹介します。

ダウ理論

チャールズ・H・ダウ(Charles H. Dow)は、ウォールストリー・トジャーナル紙に経済記事を書いていましたが、自身の考えについてまとめた本は出していません。彼の死の翌年の1903年、S・E・ネルソン(S. E. Nelson)が「The ABC of Stock Speculation」(Internet Archive)を出版して、ダウの考えを「ダウ理論」として紹介しました。

Charles H. Dow - New York World-Telegram and the Sun Newspaper Photograph Collection, Library of Congress
Charles H. Dow – New York World-Telegram and the Sun Newspaper Photograph Collection, Library of Congress(Library of Congress, Prints and Photographs Division

1922年になると、ウィリアム・P・ハミルトン(William P. Hamilton)は「The Stock Market Barometer」 Internet Archive を出版して、ダウ理論を精緻化しました。

さらに、1932年、ロバート・リー(Robert. Rhea)が「Dow Theory」を出版し、ダウ理論が完成したと考えられています。

ダウ理論には6つの骨子があります。

平均はすべての事象を織り込む

平均とはダウ平均、すなわち株価指数のことです。景気変動があれば、それに合わせて株価指数は水準を変えます。天変地異も同様で、株価指数は一時的の大きく変動する顔しれませんが、いずれ、どこかの水準で落ち着きます。これが「織り込む」ということの意味です。

トレンドには3種類ある

メジャートレンド、セカンダリー・スイング、マイナートレンドの3種類です。メジャートレンドは1~数年続きます。セカンダリー・スイングはメジャートレンドの揺り戻しで、数週間~数カ月反対方向へ動き、それまでの変化幅の1/3~2/3逆行します。マイナートレンドは、セカンダリー・スイングに対する反動で3週間未満の動きを指します。

メジャートレンドは3段階からなる

上昇局面、下降局面の両方あります。第1段階は、情報に明るい先行型の投資家だけが動き出す場面です。第2段階は、株価指数が急速に動き始め、順張り投資家が多数参入し始める場面です。第3段階は、新聞に記事が出て関連するニュースも増え、一般の投資家が参加する最終段階です。

平均は相互に確認されなければならない

ダウが考案した工業平均と鉄道平均のことです。例えば、景気が良くなって工業生産が活発になると工業平均は上昇しますが、同時に原材料や製品の物流も活発になるので鉄道平均も上昇するはずです。景気が悪くなる時も同じで両方とも下落するはずです。従って、片方だけ動くときは、騙しの可能性があるというわけです。

トレンドは出来高でも確認されなければならない

ダウは、メジャートレンドの方向に平均が動くときには、出来高が増えると考えました。上昇トレンドでは平均が上昇すれば出来高が増え、下降トレンドでは平均が下降する場面で出来高が増えることになります。

これは上昇トレンドでは、先高を期待して買い注文を出す投資家が増えるので、その通りだろうと思います。しかし、下降トレンドで先安が予想されるときには、買い手は下がってから買う方が有利なので買いを手控える可能性が大きく、出来高は増えない方が自然です。確かに、価格が大幅に急落するパニック局面では、自律反発を期待する買いが集まって出来高が増えますが、この局面はメジャートレンドとはいえません。

トレンドは明白なシグナルが出るまで継続する

メジャートレンドが上昇から下降に転じる場面では、平均が下落した後に谷を作って上昇、再び下落に転じるときの頂が最初のピークに届かず、再び下落して直前の谷底を下回ったときに下降トレンドに転じたと判断します。

一方、メジャートレンドが下降から上昇に転じる場面では、平均が上昇した後に山を作って下落、再び上昇に転じるときにできる2番底が1番底に届かず、再び上昇して直前の山頂を上回ったときに上昇トレンドに転じたと判断します。

ダウ理論におけるトレンドの転換
ダウ理論におけるトレンドの転換

ダウの考え方には、市場を観察するうえで参考になる視点が含まれています。ただ、ダウが見ていたのは150年ほど前のマーケットなので、そのまま現在に当てはなるとは考えない方が良いのではないでしょうか。

参考文献

Edwards, Robert D., Magee, John & Bassetti, W. H. C., 2001 “Technical Analysis of Stock Trends, 8th Edition” CRC Press LLC, 邦訳本:ロバート・D・エドワーズ、ジョン・マギー、W・H・C・バセッティ、関本博英訳、長尾慎太郎監修、2004「マーケットのテクニカル百科」パンローリング

Murphy, John J., 1986 “Technical Analysis of the Futures Markets” New York Institute of Finance, 邦訳本:ジョン・J・マーフィー著、日本興業銀行国際資金部訳、1990 「先物市場のテクニカル分析」(社)金融財政事情研究会

エリオット波動原理

会計士だったラルフ・N・エリオット(Ralph N. Elliott)は、療養生活を送っていた時期にダウ理論を独自に研究して精緻化しました。1938年にエリオットの研究をチャールズ・J・コリンズ(Charles J. Collins)が「The Wave Principle(波動原理)」として出版しました。エリオットは金融界に転じた後も研究をつづけ、1946年にその成果をまとめて「Nature’s Law: The Secret of Universe(自然の法則:宇宙の秘密)」を出版しました。

Ralph N. Elliott
Ralph N. Elliott

1960年になると、A・ハミルトン・ボルトン(A. Hamilton Bolton)が「Elliott Wave Principle」を出版し、再びエリオットの研究が注目されることになりました。さらに、1978年にロバート・R・プレクター(Robert R. Prechter Jr.)とA・J・フロスト(A. J. Frost)が「Elliott Wave Principle: Key to Market Behavior」を出版し、世界に広く知られるようになりました(邦訳本:ロバート・R・プレクター、A・J・フロスト著、関本博英訳、長尾慎太郎監修、2009 「エリオット波動入門」パンローリング)。

エリオット波動原理の基本原則は3つあります。

8波構成

エリオットは、上昇相場の1サイクルは1つの上昇波(強気相場)と1つの下降波(弱気相場)で構成されると考えていました。そして、上昇波は上昇(第1波)・下降(第2波)・上昇(第3波)・下降(第4波)・上昇(第5波)の5波構成、下降波は下降(A波)・上昇(B波)・下降(C波)の3波構成の計8波で1つのサイクルが終わると考えていました。

下降相場の1サイクルは、下降波と上昇波の組合せになり、下降波が5波構成、上昇波が3波構成の8波になります。

エリオット波動の8波構成
エリオット波動の8波構成

推進波と修正波

主トレンドと同じ方向に動く波を推進波、反対方向に動く波を修正波といいます。つまり、上昇波では上昇が推進波で下降が修正波になり、下降波では下降が推進波、上昇が修正波になります。波の記号でいうと第1波、第3波、A波、C波が推進波で、第2波、第4波、B波が修正波ということになります。

推進波はトレンド方向の動きなので、修整波よりも勢いがあり、価格変化率も大きくなる傾向があります。一方、修整波はトレンドの揺り戻しの動きなので、推進波ほどの勢いはなく、価格変化率も小さめとなるのが普通です。

フラクタル

エリオットは、相場はフラクタル構造になっていると考えていました。フラクタルは、フランスの数学者ブノワ・マンデルブロ(Benoît B. Mandelbrot)が考案した概念で、1部分の形状が全体の形状と自己相似になっているものを指します。海岸線の木の枝などの形状が代表例ですが、価格推移も日足、週足、月足などは相互によく似た形状をしています。

つまりエリオットは、第1波と第2波、第3波と第4波、A波とB波は、それぞれ一回り小さい5波と3波で構成されていると考えたのです。第5波とC波はともに5波構成になります。そして、日中の細かな値動きから数年に及ぶ長大な値動きに至るまで、すべてフラクタル構造になっていると考えました。

エリオット波動原理では、価格推移の中にある数多くの山と谷を8波構成として整理し直すことで、過去の相場推移を理解し、今後の予想に役立てようとします。これは多くの信奉者を集めることになり、現在もプレクターはエリオットウェーブ・インターナショナルで分析のサービスを提供しています。

エリオット波動原理では、どのように波動をカウントするかで予想結果が大きく変わる場合があります。このため、波動カウントをする山や谷の選択が恣意的ではないかという批判が絶えません。これは、山や谷の選択を人が行っているからです。

しかし、「一定の比率以上逆行したらトレンドが転換したとみなし、それ未満の変化ならトレンドは継続しているとみなす」というカギ足の転換ルールを使えば、山と谷をコンピューターに自動判定させて波形を機械的に描くことができます。エリオット波動原理には進化の余地があるように思います。

エリオット波動の自動描画
カギ足の転換ルールによるエリオット波動の自動描画

ギャン理論

ギャンは、25日間に286回の取引を行い、450ドルを3万7000ドルにしたとか、1929年に秋の大暴落を予想したなど、逸話がたくさん残る伝説のトレーダーです。何冊かの本を出していますが、投資の心構えや資金管理などについて書かれたものが多く、価格分析について詳しく解説されたものは少ないようです。

1998年にジェームズ・A・ハイアーチェク(James A. Hyerczyk)がギャンの理論を整理して「Pattern, Price & Time」を出版しました。弊協会が邦訳して「実践 ギャン・トレーディング:相場はこうして読む」(日本経済新聞社)を2001年に出しましたので、内容を日本語で読むことができます。

ギャン理論の独特の概念は3つあります。

ギャンアングル・チャート

ギャンアングル・チャート
ギャンアングル・チャート(ジオメトリック・アングル)

ジオメトリック・アングルともいいます。ギャンは、時間と価格は1:1の関係にあり、そのようにチャートを描き、45度の角度のトレンドラインを引いて将来の支持線や抵抗線になると考えました。1930年頃の日本でも、カギ足では45度のトレンドラインを重視していたようなので、共通する理由が何かあったのかもしれません。

パーセンテージ・リトレースメント

ギャン・リトレースメントということもあります。リトレースメントとは、英語で「揺り戻し」といいう意味です。ギャンは1/8と1/3刻みの割合に注目し、上昇や下落のめどになると考えていました。つまり、1/8=12.5%、2/8(1/4)=25%、1/3=33.3%、3/8=37.5%、4/8(1/2)=50%、5/8=62.5%、2/3=66.6%、6/8(3/4)=75%、7/8=87.5%、8/8(1/1)=100%です。

ギャン・スクエア

ギャン・スクエア
大底を500円、2円刻みとした場合のギャン・スクエア

カージナル・スクエアともいいます。正方形の方眼の中央に大底の価格を置き、らせん状に等間隔で価格を配置してゆくと、中央値の垂直方向、水平方向、45度の方向にある数字が、将来の支持や抵抗になると考えました。

残念ながら、市場分析に合理的に適用するにはどうすればよいのか、収益寄与が期待できるのか、疑問の多い手法です。アングル、リトレースメント、スクエアのいずれも、将来見通しとなる候補の数が多いので、どれかは近似値として当たるでしょう。しかし、どれが最も可能性が大きいのかを事前に示唆してはくれないようです。

とはいえ、エドワーズの本((*1))と並んでテクニカル分析の入門書として定評のある、マーフィーの本((*2))にも取り上げられているので、米国ではそれなりの評価を受けているのでしょう。現在も信奉者が多くいるようで、ギャンチャートを描く専用ソフトなどを販売するGann Traderというサービスがあります。

*1:Edwards, Robert D., Magee, John & Bassetti, W. H. C., 2001 “Technical Analysis of Stock Trends, 8th Edition” CRC Press LLC, 邦訳本:ロバート・D・エドワーズ、ジョン・マギー、W・H・C・バセッティ、関本博英訳、長尾慎太郎監修、2004「マーケットのテクニカル百科」パンローリング、ギャン理論についての説明はありません。

*2: Murphy, John J., 1986 “Technical Analysis of the Futures Markets” New York Institute of Finance, 邦訳本:ジョン・J・マーフィー著、日本興業銀行国際資金部訳、1990 「先物市場のテクニカル分析」(社)金融財政事情研究会

一目均衡表

一目均衡表
一目均衡表のチャート例

一目均衡表は、都新聞(現在の東京新聞社)の商況部長であった細田悟一が、1935年に都新聞で「新東転換線」として発表しました。後に一目山人のペンネームを用いるようになり、チャートも「一目均衡表」に改称したということです。1969年から1981年にかけて「一目均衡表」7部作を順次出版して手法の詳細を公開しました。

この本は非常に高価な本でしたので、広く一般に普及することはありませんでした。しかし、佐々木英信が独自の研究を進めて1996年に「一目均衡表の研究」を出版すると、徐々に広く知られるようになりました。その後、デビッド・リントン(David Linton)が、2010年に「Cloud Charts: Trading Success with the Ichimoku Technique」(Internet Archive)を出版し、世界中に知られる手法になりました。

現在は、株式会社経済変動総研が権利を継承して、情報発信を続けています。

一目均衡表は、「時間論」、「波動論」、「水準論」の3つで構成される、大きな理論体系となっています。それぞれの基本は以下のようになります。

時間論

9、17、26の単純基本数値、これらの数値を組み合わせた33、42、65、76、129、172などを複合基本数値といいます。特徴的な山や谷からこれらの数値に該当する時間が経過した時に、価格推移の傾向が変化しやすい変化日として注目します。

波動論

上昇あるいは下降だけで構成される「I波動」、上昇と下降あるいは下降と上昇の2波で構成される「V波動」、上昇・下降・上昇あるいは下降・上昇・下降の3波で構成される「N波動」を基本として、価格の推移をこれらの波動の組合せと考え、現状分析や今後の想定を行います。

水準論

最終的にN波動になると仮定して、すでに形成されたV波動からN波動の終着点を予想するものです。「N計算値」、「V計算値」、「E計算値」、「NT計算値」の4種類があります。

チャート

一目均衡表は、ローソク足に加えて、基準線、転換線、先行スパン1、先行スパン2、遅行スパンの5本の線を描きます。このうち、2本の先行スパンに挟まれた範囲は網掛け表示するので、俗に「雲」と呼ばれます。これらの線や雲と株価(一目均衡表では実線と呼びます)の位置関係や交差で、その後の相場展開を予想します。

一目山人は、延べ2万人の学生アルバイトを使って個別銘柄の価格推移を調べ、一目均衡表を編み出したとされています。大変な労力をかけたことには敬意を表しますが、人の目で周期や転換点を探し、構築された論理体系には、多少なりとも観測者の主観が紛れ込んだことは否めません。

少なくとも、約100年前の市場の観察から得た基本数値が、現在のマーケットでも有効かという検証をした方が良いのではないでしょうか。また、銘柄が変わっても基本数値は同じで良いのか、という検証も必要なように思います。従って、一目均衡表の分析結果を参考にする場合には、それらの点を割り引いて考える方が良いのではないかと思います。

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